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【静岡県浜松市のまつり 夏秋編】数百年の伝統が受け継がれる民俗芸能を描きました!

 2020/06/18
学ぶ この記事は約 9 分で読めます。
残したい景色:浦川歌舞伎

浜松には全国でも珍しい形式の伝統文化がたくさん伝わっています。
しかも数百年の歴史を持っています。

今回のシリーズは、山々や建物の風景ではなく、残しておきたい民俗芸能の風景をお送りします。
多くありすぎて、ほんの一部しかご紹介できませんが、実際に取材に行った祭りです。

祭りといっても、一夜を通して行われる神事の舞もありました。
今回は、地元に根付いた祭りの遠州大念仏・宮口のお祭り・浦川歌舞伎をお送りします。

 

「遠州大念仏」

残したい民俗芸能景色:遠州大念仏

浜松市で無形民俗文化財に指定されている盂蘭盆の念仏踊りです。

戦国時代、三方ヶ原の合戦で、徳川家康軍が敗走しました。
居城まで追ってきた武田勢を食い止めるため、犀ケ崖に布の橋を掛け、そこへ誘い込みます。
結果、多くの武田勢の兵士が崖から落ちて命を落としました。
布橋という地名もありますが、伝承です。

この戦いで命を落とした武田勢兵士の鎮魂のために宗円僧侶が迎えられ、行われるようになった行事です。
遠州大念仏を行うグループが数多くあって、初盆のお宅に行って、鎮魂の舞をします。

太鼓を中心にして、その両側に双盤(そうばん)を置いて、音頭取りに合せて念仏やうたまくらを唱和します。
太鼓を勇ましく踊るようにして打ち鳴らし、初盆の家の供養を行います。

作品は、舞が終わって、オカメひょっとこも出て、賑やかに撤収する様子です。

浜松のお盆は7月(地域によっては8月)に行われます。
その他、磐田市、袋井市でも実施される地域があります。

現在、約70の組が遠州大念仏保存会に所属し活動しているそうです。
毎年‪7月15日‬、三方原合戦の死者の供養として、犀ヶ崖資料館 前庭にて、遠州大念仏が行われています。

しかし残念なことですが、2020年はコロナ禍の影響で全て中止になってしまいました。

 

 浜松市宮口:六所神社「浦安の舞」

残したい民俗芸能景色:浦安の舞

1940年(昭和15年)の「皇紀2600年奉祝会」に奉奏に合わせ、全国の神社で奉祝臨時の神事を行うにあたり、神楽舞が新たに作られました。
それ以来、各神社で舞われるようになり、現在でも続いている神事です。

神をまつるために奏する神楽のうちの「巫女神楽」とよばれるものになります。
毎年行われる地元の宮口のお祭りでも、六所神社にて前夜祭と本祭りの2回本殿で浦安の舞が奉じられます。

お祭りに参加する地域の中で、毎年当番の地区が年番として、浦安の舞を奉じます。
年番が住む地区の小学校6年生の女子が、日々練習を重ね、お祭り当日を迎えます。

舞った後の記念集合写真は、神社の社務所へ飾られ、歴代の舞姫達が何十年にも渡って飾られています。

 

「宮口のお祭り 御殿屋台曳き廻し」

残したい民俗芸能景色:宮口のお祭り

浜松市浜北区宮口の北の丘の鎮守の森に、「六所神社」があります。
遠江六十二座式内神社の一社であり、麁玉郡多賀明神と言われています。

六所神社の六所とは、「底津海祇神」「中津海祇神」「上津海祇神」「底津筒男命」「中津筒男命」「上津筒男命」の六柱の神が祀られています。
(神様は1柱・2柱と数えます)

全国にある六所神社にはそれぞれ違う神が祀られているようです。
6柱の神が全て、イザナギ・イザナミの間に産まれた海に関係する神です。
なぜ海に関係する神が祀られているのかは判りません。

毎年、9月第2土曜日と日曜日に浜北区宮口のお祭りが行われます。
(土曜日が前夜祭・日曜日が本祭り)
さらにその前日の金曜日には、それぞれの地区を御殿屋台の曳き廻しが行われます。

前夜祭の土曜日に小高い丘の上にある六所神社に、御殿屋台が境内に集まります。
そのまま境内に1泊します。
御殿屋台が神社の境内に1泊するのは珍しいとのことです。
(最近まで、どの地域も御殿屋台は神社に泊まるものだと思っていました。違うんですね)

浜松祭りと同じように、御殿屋台をロープを持って、揃いの法被で曳き廻します。
練りも加わって、熱気はますます上がって行きます。

しかし残念ながら、2020年は、神社の神事(浦安の舞も含め)は行われますが、コロナ禍の影響で御殿屋台の曳き廻しは中止になってしまいました。
来年は実施されることを祈ります。

 

「浦川駅の周辺」

残したい景色:浦川駅周辺

「飯田線沿い 地元で残したい風景」第4弾でも紹介させていただいた「浦川駅」です。

浦川駅を出ると、駅の入り口に横断看板が出迎えてくれます。
歌舞伎の顔と鮎が元気に飛び跳ねる絵がデザインされ、鮎と歌舞伎の里と書かれています

「鮎の駅浦川」とアピールされ、鮎釣りの玄関口として、また浦川キャンプ場やハイキングコースも整備されていて、賑やかな町です。

1934年の三信鉄道(現JR飯田線)開通後は、清流にアユを求める釣り人でもにぎわうようになりました。
今から160年ほど前にこの地への公演を最後に病死した、江戸の歌舞伎役者の尾上栄三郎の上演が発端となって、平成元年から素人歌舞伎が復活しました。

しかし残念なことに、資金不足と高齢化のために令和元年の公演を最後に休演してしまいました。
浦川駅の周辺は、浦川小学校や道沿いに家々が並んでいます。

浜松市教育委員会は地域の歴史や文化、自然などの資源を顕彰する「浜松地域遺産」として、新たに「浦川の街並み」が認定しました。
静岡・愛知県境に位置する浦川地区の街並みは、伝統的建造物群として認定されました。
戦前は繭、戦後の復興期は材木の集積と取引で栄え、現在も残る蔵や、商人宿として使われた建物が往時の光景をしのばせています。

 

「浦川歌舞伎」

残したい景色:浦川歌舞伎

2019年‪9月28日(土)‬に浜松市天竜区佐久間町浦川へ取材へ行き、「浦川歌舞伎」を観劇してきました。

「浦川歌舞伎」は浦川の方々により、江戸時代後期に始まったとされます。

160年前の江戸時代、歌舞伎役者「尾上栄三郎」がこの地を公演を最後に病死したのが「浦川歌舞伎」の発端でした。
住民の手で昭和期まで続きましたが、次第に勢いが衰え1962年(昭和37年)に終了。

しかし歌舞伎の公演を復活させようと、地域住民の有志が集まり平成元年に復活しました。

浦川ふれあいセンター北側の旧浦川中体育館につくられた特設舞台「旭座」で、毎年9月下旬公演を続けています。
会員らは、愛知県豊川市出身の歌舞伎役者・市川升十郎一門の指導を受けて本格的に歌舞伎の所作を学びました。
公演の役者から裏方まですべてを浦川歌舞伎保存会の会員が行っています。

地域の伝統に触れ、郷土愛を深めてほしいと願いを込め、児童が出演する演目「白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場」は人気演目になっています。

歌舞伎を町のイメージ向上資源とした商業活性化事業も展開され、2016年度に浜松市内の文化資源の顕彰を目的とした「浜松地域遺産」の認定を受けました。

ただ、平成30年間で保存会を取り巻く環境は変わりました。
浦川に住む人は当時の半分以下に減少してしまいました。

昭和期の歌舞伎を知り、熱心に保存会を支えていた住民有志も少なくなり、地元の人口減少や高齢化が著しく、会員維持や活動費の工面などに苦心しているそうです。
2019年の第31回公演を最後に定期公演を休演(中止とは言っていませんでした)するとのことです。

プロの歌舞伎役者にも引けを取らない舞台は、観ている私を充分魅了しました。
またいつの日にかの復活を望んでやみません。

 

ご紹介の祭り 詳細情報

遠州大念仏が毎年行われる「犀ヶ崖資料館」

犀ヶ崖資料館で毎年行われる大念仏は見学可能。

「犀ヶ崖資料館」詳細情報

会場 犀ヶ崖資料館
会場住所 浜松市中区鹿谷町25-10‬
電話 053-472-8383
開館時間 9:00〜17:00
定休日 月曜日(国民の祝日の場合はその翌日)
国民の祝日の翌日
年末年始(12月29日~1月3日)
入場料 無料
駐車場 無料駐車場あり
アクセス バス JR浜松駅北口バスターミナル1番ポール「舘山寺」行き・15番ポール「奥山・気賀」「和合・高丘」行き乗車→「浜松北高」または「さいが崖」下車→徒歩1分
JR浜松駅から257号線経由約15分
HP https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/c-machi/culture_art/saigagake/saigagake.html

 

宮口の祭り「浦安の舞」が行われる六所神社

六所神社」の詳細情報

宮口の祭り開催日 毎年、9月の第2土曜日と日曜日
会場住所 浜松市浜北区宮口1‬
電話 053-545-7485
拝観時間 自由

 

「浦川駅」

飯田線沿いの地元の残したい風景:浦川駅

無人駅「浦川駅」の詳細情報

住所 浜松市天竜区佐久間町浦川2820
隣接駅 上市場駅 – [浦川駅] – 早瀬駅
駐車場
アクセス 電車 JR「浜松駅」→JR「豊橋駅」→JR飯田線乗り換え→「下川合駅」到着約2時間30分
国道257号線・国道474号線経由 約1時間20分

 

「浦川歌舞伎」

令和元年に最終公演を迎えた「浦川歌舞伎」

開催日 定期公演開催終了
会場 旧浦川中学校体育館
会場住所 浜松市天竜区佐久間町浦川2792‬
HP https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/shiminkyodo/tyuusankanevent/urakawakabuki.html

 

浜松民俗芸能【春夏編】を描いて

今回は、遠州大念仏・宮口の大祭・浦川歌舞伎の三つの民俗芸能を紹介しました。

2020年はコロナ禍で、色々な行事は中止になっています。
遠州大念仏もその影響で中止。
宮口の大祭も神事は執り行われるものの、楽しみにしていた御殿屋台の曳き廻しが中止になってしまっています。

コロナ禍とは関係なく、平成元年から続いて来た浦川歌舞伎が休演となってしまいました。
世情によって大切な民俗芸能が消えてしまうのは寂しいし残念です。

コロナ禍が終焉するのにどれだけの時間がかかるか、予想もつきませんが、コロナが原因で民俗芸能が消えてしまうのだけは避けたいですね。

 

次回は民俗芸能 秋冬編(川合花の舞・秋葉神社火祭り・寺野ひよんどり)をお届けします。

「川合花の舞」は、県指定の民俗文化財に指定されています。
「秋葉神社火祭り」は、護摩火渡りの神事の様子。
「寺野ひよんどり」は、国指定重要無形文化財になっている神事です。

実際の取材で、深淵で荘厳な舞に、異次元へ飛ばされてしまいました。
お楽しみに!!

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残したい景色:浦川歌舞伎

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この記事を書いたひと

山下清生

山下清生

浜松工業高校デザイン科卒。
3年間印刷会社でデザイナーを経験したあと、ヤマハ発動機(株)勤務。
定年を迎えましたが、引き続き勤務中。

だから、昔から好きだった絵を描くことを再開しました。
(まだ5年くらいは働きますが・・・)
今、描きたいものが、たくさん目の前に現れています。
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<受賞歴>
2020年 2月 「浜松市芸術祭第67回市展」入選
2020年11月 「日本国際水彩画会秋季秀作ネット展2020」入選
2021年 4月 「第21回日本国際水彩画交流展」入選
2021年 6月 「第4回日美展・絵画部門」入選
2021年 9月 「第45回記念新日美展」佳作入賞
2021年11月 「JIWI秋季国際水彩画展2021」入選
2022年 1月 「浜松市芸術祭第69回市展」入選
2022年 6月 「第5回日美展 絵画部門」優秀賞
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◆絵だけでなく小説の執筆活動にも挑戦していました。

1996年(平成8年) 作品「こちら何でも相談室」創元推理短編賞 
2001年〜2005年頃 掛川市大須賀に在住のミステリー作家の「木谷恭介」に弟子入りして、木谷工房に参加
         「玉沖好也(たまおきよしや)」というペンネームで一部下書きとアイデア出し、表紙を担当させていただきました。
2012年(平成24年) 作品「二俣城備忘録」伊豆文学賞 
2020年(令和 2年) 作品「二俣城攻防録」ふじのくに芸術祭2020文学部門小説の部 奨励賞
2021年(令和 3年) 作品「潮流(万石事件)」ふじのくに芸術祭2021文学部門小説の部 入選