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地元浜松のお寺で春のお参り ~千五百年の伝統に触れる『花祭り』~

『花祭り』とは

花祭り

二つの意味の『花祭り』

実は、日本で開かれている『花祭り』には、2つの意味がありますよ。
『お花を楽しむためのお祭り』『仏教行事の花祭り』です。

例年、4月8日頃は、全国的にはのシーズンですね。
そして、まだまだ、椿などの冬のお花も咲いていることが多いです。

温暖な浜松では牡丹の蕾が膨らみ始めたりもしています。
この日は、『お花を楽しむためのお祭り』にはもってこい!ですね。

では、二つ目の『仏教行事の花祭り』とはどのようなものなのでしょうか?
ご紹介してまいります。

 

仏教行事としての花祭り

日本には、6世紀に『花祭り』で使われる道具などが伝わったといいます。
つまり、千五百年の伝統があるんですね。

現在の『花祭り』の多くは、このようなものでしょう。

“花御堂(はなみどう)というお花で飾った小さなお堂の中に桶を置き、そこに小さな仏像を祀ります。
お坊さんがお経を唱え、参列者は甘茶をそそいで、仏さまを供養をします。“

『花祭り』で祀らる仏像は、とっても印象的なお姿をされていますよ。

【天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)】という言葉がありますが、ご存知の方も多いことでしょう。

これは、お釈迦様がお生まれになって7日後に発した言葉だとされています。

その時、お釈迦様は、人差し指を立てた右手を上にあげていらっしゃっいました。
この様子を絵に描いたり造像したりしたものを、特に“誕生仏”と言い、『花祭り』で供養されているのは、このようなお姿をされている“誕生仏”です。

『花祭り』では、可愛らしい幼子の姿を現している“誕生仏”の中でも、特に小さなお像が祀られることが多いです。
心和むお釈迦様のお像に出会えるのも、『花祭り』の楽しみの一つかもしれません。

 

「甘茶」のなぜ

さて、甘茶とはどんなお茶で、なぜ頭にそそぐのでしょうか?

甘茶とは、アマチャを乾燥させた葉を煎じて作ったもので、少し甘味が感じられるお茶です。

お釈迦さまの頭に甘茶をそそぐことは、次のような伝承によるものだといわれます。

*お釈迦様がお生まれになった時に、天の神様たちが特別なお湯をそそぎました
*お釈迦様がお生まれになるその瑞兆として、甘露(かんろ。不死が得られるともいわれる甘い液体。また、仏さまの教えをさすことも。)があらわれました

現代も行われている仏教の行事にも、お釈迦様誕生のお話が伝わっているのですね。

花祭り アマチャ 甘茶

【アマチャとは?】

ヤマアジサイの甘味変種で日本の中部山地にまれに自生するユキノシタ科の落葉性の低木です。
主に葉を生薬として用いられています。

生の葉は苦くて甘みがありませんが、加工調製で発酵させることで甘くなります。

 

『花祭り』のいろいろな名前

この行事はいろいろな名前で呼ばれています。

・仏生会(ぶっしょうえ)
・仏誕会(たんじょうえ)
・灌仏会(かんぶつえ)
・花供養会(はなくようえ)などです。

灌仏会の灌は、灌(そそ)ぐという意味です。

 

浜松市内寺院の『花祭り』

鴨江寺

鴨江寺

参拝客で大賑わいの、鴨江観音お彼岸詣りでも有名な鴨江寺。

奈良時代の創建と伝わる古刹で、かつては七堂伽藍を有するほどの大寺院でした。
浜名湖周辺の真言宗七ケ寺による、浜名湖七福神の弁天様もお祀りしています。

 

鴨江寺の『花祭り』

鴨江寺

毎年4月8日に八角堂に花御堂が祀られています。

小さな仏さまに甘茶をかけたり、ポットに入っている甘茶を飲むことができるようになっています。
朱塗りの八角堂に花御堂が美しく映え、春の陽気の中、素敵な時間を過ごすことが出来ました。
毎年このように供養され、誰でもお参りができるそうです。

甘茶をかけお参りをしてから、観音堂・お地蔵さま・成田山不動堂・弁天堂を巡り、気持ちがリフレッシュしました。

 

岩水寺

岩水寺

紅葉の美しさや安産祈願でも有名な岩水寺は、奈良時代創建の古刹です。

本尊は天竜川の龍神様の化身と言われているお地蔵様で、国の重要文化財に指定されるほど特別なお像です。
安産や子育てを守って下さるという信仰も篤いですね。

 

岩水寺の『花祭り』

岩水寺

4/8当日は本堂で田村神社のお祭りが行われたようですが、残念ながら私は参列できませんでした。

本堂横には花御堂があり、ここで、お釈迦様の誕生を祝うことができます。
この日の岩水寺には、八重桜・しだれ桜・シャガなどのたくさんのお花が咲いていましたよ。
赤い灯篭のある小川としだれ桜が作る風景は、とっても素敵でした。

岩水寺

他にも、桜祭りとして、地元団体のコンサートやゲームがあり、夜桜ライトアップが行われたとの事でした。

岩水寺「さくらの里まつり」「花祭り」 詳細情報

夜桜ライトアップ 2018年4月6日~8日
18:00~21:00
田村神社のお祭り 2018年4月8日
花祭り 2018年4月8日
10:00~15:00
※コンサート・奉納芸能やゲームなどが行われます。

 

龍潭寺

龍潭寺

2017年の大河ドラマ『おんな城主直虎』で全国的に有名になった龍潭寺。

2018年に入っても多くの参拝者が訪れる、大人気の寺院です。
大名井伊家の菩提寺にふさわしい風格を持つ龍潭寺建造物や庭園は、どの季節にお参りしても大変美しく、心癒されます。

 

龍潭寺の『花祭り』

龍潭寺花見堂提供:龍潭寺

2018年の龍潭寺花祭りは、このように行われたそうです。

龍潭寺の花祭り

開催日 2018年4月1日
時間 13:00~
会場 本堂
内容 ご住職様による読経と甘茶灌沐
その後「花園女性部総会」にて、妙心寺説教師による法話会

2019年度も同じスケジュールで行われ、どなたでも参列が可能なのだとか。

今年は、4/1~4/8まで、本堂に花御堂が飾られました。
龍潭寺の花御堂は、地元の方が持参されたたくさんの種類のお花で飾られたそうです。

というのも、浜松市北区は、お花の生産も盛んな土地なのです。
生花、しかも地元の方や檀家さんが持ち寄られらお花で飾る花御堂というのは、心が温まるような、素敵なものですね。

ちなみに、龍潭寺の花御堂では屋根にたくさんのお花を飾っているのですが、これは屋根に置いてあるだけなのだそうです。
落ちないようにお花の置き方を工夫されていると聞きました。

 

ご紹介した寺院の詳細情報

甲江山鴨江寺(真言宗)

鴨江寺

静岡県浜松市中区鴨江4丁目17-1
甲江山鴨江寺 詳細情報

住所 静岡県浜松市中区鴨江4丁目17-1
電話 053-454-5121
拝観時間 9:00~
拝観料 なし
御朱印 300円
※浜名湖七福神専用の宝印帳持参の場合には200円
駐車場 無料
アクセス バス JR浜松駅北口バスターミナルから遠鉄バス乗車「鴨江観音」下車すぐ
電車 JR浜松駅より徒歩15分
東名「浜松IC」「浜松西IC」から車で約20分
公式HP www.kamoeji.jp/

 

竜宮山岩水寺(真言宗)

岩水寺

静岡県浜松市浜北区根堅2238
竜宮山岩水寺 詳細情報

*観光のお寺ではありません。
参拝の際には、信仰の場にふさわしい行動を心がけましょう。

住所 静岡県浜松市浜北区根堅2238
電話 053-583-2741
拝観時間 8:30~16:30
拝観料 なし
御朱印 ご本尊・七福神ご朱印 300円
浜名湖七福神宝印帳の場合使用 200円
駐車場 無料
アクセス 電車 遠州鉄道「岩水寺駅」より徒歩約10分
新東名「浜北IC」より車で約10分
東名「浜松IC」より車で約40分
公式HP http://www.gansuiji.jp/index.html

 

萬松山龍潭寺(臨済宗)

龍潭寺

静岡県浜松市北区引佐町井伊谷1989
萬松山龍潭寺(臨済宗)

*混雑時には、通常よりも通行に時間がかかる場合があります
*駐車場が満車の場合があります。混雑時には、係り員の指示に従ってお進みください。
*駐車場以外の場所への駐車は大変迷惑になりますのでおやめください

住所 静岡県浜松市北区引佐町井伊谷1989
電話 053-542-0480(代)
拝観時間 9:00~16:30
休観日 毎年 8月15日
12月22日~27日
拝観料 大人500円
小・中学生200円
御朱印 300円
駐車場 無料
アクセス バス JR浜松駅北口バスターミナルの遠鉄バス15番「奥山行き」乗車→「神宮寺」下車徒歩10分
東名「浜松西IC」から車で約15分~20分
公式HP http://www.ryotanji.com/

 

おわりに

浜松のお寺で行われる『花祭り』をご紹介いたしました。

とても長い伝統を持つ『花祭り』ですが、お寺の年中行事の中では参加しやすいのではないでしょうか。

仏さまを偲びながら・・・
季節のお花を楽しみながら・・・

ぜひ一度、お参りになってみて下さいね。

 

[参考書籍]
『仏具大事典』岡崎壤治監修/株式会社鎌倉新書/1982年発行
『岩波 仏教辞典』中村元・福永光司・田村芳朗・今野達・末木文美士編/岩波書店/2010年発行

 

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この記事を書いたひと

蓮仏ゆき

蓮仏ゆき

「知っているようで意外と知らない地元の仏像の素晴らしさをお伝えするために活動しています。」
浜松史跡調査顕彰会会員、仏像愛好研究家。

仏像好きが高じてカルチャーセンター他で仏像講座の講師をする。
静岡県と愛知県を中心に、「仏像鑑賞講座」「陶器の仏像作成講座」「寺社巡り講座」「御朱印講座」「浜名湖湖北五山講座」など、多数の講座を開催中。

女子美術大学短期大学部卒(彫塑)。
佛教大学文学部中退(仏教美術)。

父も祖父も華道家元。
自身もかつては華道・フラワーアレンジメント、他に、万葉集鑑賞入門を教える。

仏像愛好家blog
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